ピンチをチャンスにしてほしい

今年の流行語は因果応報などになるのだろうか。つくづく感じるが、顔を晒す形で他人を声高に批判することを続けていると、いずれ自身がしっぺ返しを食らうものなのだ。山尾氏の件は、まるでそういう教科書のようだ。

すでにあちこちで散々言われているが、彼女が不倫していたことと政治家という職業には直接の関係性はなくて不倫したから政治家を辞めることが必要かというとそんなことはない。また怒っている人も、多くはそのようなことをもともと思っていない。思っているのは、さんざん他人を批判しておいて、自分の番が来たらほっかむりはおかしいではないか、という理不尽への怒りだ。

しかし、彼女も馬鹿ではないだろうから、本当に不倫関係にあったのだとすると、一体どういう気持ちでそのような生活をしていたのだろう、という不思議は感じる。自身が議員の不倫や疑惑を追求しながら名を上げてきている以上、自身が人一倍監視されている、という意識を持つのは自然なことと思う。なのに週4回、「疑われても仕方のない行動」をするものだろうか。そこまで「自分だけは大丈夫」などと思えるものなのだろうか。政治家なのに。それとも、そういった中でも不倫をしてしまう、という状況がよかったのだろうか。

下衆の勘繰りはやめるとして、民進党はどうなるのだろう。今回の「民進党に打撃」は、期待の政治家が離党したなどということではもちろんない。「民進党はブーメランばかり投げる」という揶揄を特大のブーメランで実証してみせたことと、今までスキャンダルや疑惑の追及(と称する非生産的な批判)しかしておらず、同じように批判されてみると、まるで対応できないことを露わにしたこと。この2点が決定的に党の看板にくっついた形になった。

私は、そろそろ「反省の波」が来るのではないかと思っている。野党がこれまで続けてきた批判追求の流れに、おそらく一般的な温厚な日本人はうんざりしているのだ。自分の弱点をごまかしながら他人をいじめ抜くようなやり方は見たくないのだ。しかし、あまりにも批判追求が激しいため、もう「真摯に謝る」という行為を取ることは誰もなくなっている。

それがチャンスだと思う。前原氏は、党内の事情、口にするのも恥ずかしいような情けない内情があるとすれば、それも含めすべて話し、「このように具体的な政策論争に及ばないまま、疑惑だけで与党批判を続けたことは間違っていた」と表明、謝罪した上で、「今後は審議拒否を行わず、たとえ多数決で負けるとしても堂々と政策論争を行い、反対のための反対などしない」と宣言してはどうか。

マスコミは許さないかもしれない。これまでマスコミと野党は、証拠のない疑惑を書き立てればそれをベースに政治家が追求する、というマッチポンプで生きてきた。一方的に降りると言われても困るからだ。しかし、もうその進め方はそっぽを向かれている。今気づき、今行うべきだ。今もし真摯な自己反省、自己批判の姿勢を見せると、自民党は大変にまずい状況になるだろう。

野党があの通りだったから、「与党を擁護したい空気」がなんとなくできていた。こんなに理不尽な批判を浴びせられたら、そりゃ怒るよな、こんな馬鹿な疑惑で質問されても答える気にならないだろうな、と。だから野党など放っておけばよかったのだ。しかし、真摯な自己反省をした野党が、与党はどうするんだといい出すと厄介だ。本当の「丁寧な説明」をしなければならない状況に追い込まれるかもしれない。

前原氏にどこまで期待できるものかわからないが、ここで変われなければ民進党は解散したほうがよい。私としては、ぜひ変わってもらい、今後は日本に蔓延した「責任者をとにかく追求する」という醜い批判合戦を、「納得がいかない」という言いがかりでどこまでもクレームを付けてしまう世の中を、変えてもらいたいと思う。